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カフェ・メトロノーム

カフェ・メトロノーム

カフェ・メトロノーム
著: 深森藍子
発行: イーグルパブリシング
レーベル: キャンティノベル
ジャンル:御曹司

日本有数のホテル系財閥・橘グループの令嬢ちはるには、誰にも言えない秘密があった。
それは、家の事情で女の子として育てられたものの、本当は男の子だということ。
グループのため自分を欺きつづける日々に限界を感じていたある日、祖母から「喫茶店のオーナーになれ」と言われたちはるは……。


目次
プロローグ
第一話 ココアの達人
第二話 見習コーナー
第三話 いよいよオープン
第四話 うわさ・噂・ウワサ
第五話 気まずい店番
第六話 降り続く雨
第六話 守りたいもの
第六話 うそつきのキス
エピローグ

オープンから早くも十日が経ち、ちはるの生活のリズムに『カフェ・メトロノーム』がしっかりと組み込まれるようになった。
『カフェ・メトロノーム』の営業時間は朝の十時から夜の十時までだったが、ちはるはまだ高校生ということもあって、平日は放課後から午後七時までがコアタイムである。
本当はもっとたくさん働きたいのだが、かおるがどうしても許してくれず、この時間で切り上げる約束になっている。
そして開店からちはると同じ午後七時までがコアタイムの敦司が、ちはるを毎日バス停まで送ってくれることになっていた。
敦司が引き上げてから閉店までを切り盛りするのは、雅之の役目である。
早々と就職先も決まり、あとは卒業論文を書くだけという気楽な身の上ということもあって、雅之は講義やゼミの合間に店に戻っては、ランチタイムなどもまめに手伝っていた。
高校生とは名ばかりで、ほぼフリーターと化している潤は、一応放課後から午後九時までが拘束時間だったが、その日によって朝の仕込みから手伝ったり、閉店後の施錠まで引き受けたりと気ままなものだった。
もの珍しさも手伝ってか、滑り出しの客の入りは上々である。
夕方前の、誰もがひと息つきたくなる時間になると、二十四席あるうちの半分以上が埋まる。
ランチも一種類しかない割には評判が良く、ちはるたちも店に出れば、なんだかんだと忙しかった。
それでも、ぽつんと――それこそ穴の開いたように、人の気配が全くなくなるときがある。
ちはるは六番テーブルにいた若いサラリーマンが席を立つのを待って、プリーツ扉を閉めた。
オープンエアは夕方の六時まで。
『カフェ・メトロノーム』では、その時間を過ぎたら扉を閉める決まりになっている。
施錠を確認し、テーブルのカップを片づけてしまうと、ちはるは途端にすることがなくなった。
まだ夕方の六時をまわったばかりだというのに、さっきの若いサラリーマンが最後の客で、店内には誰の姿もない。
「今日はお客さん、あんまり来ないね」
「そうだな」
いくぶん素っ気なく言うと、敦司はカウンターを出て控え室に戻り、夕刊を手に戻ってきた。
「なんだったら、今日はもう上がってもいいぞ。そのうち雅之と潤も来るだろうからな」
「えっ、やだよ、そんなの。ちゃんと最後までいる!」
「まあ、どっちでもいいが」
興味なさそうに答えてカウンターに戻り、棚に背中を預けてバサリと新聞を広げる。
いつもと変わらない様子で記事に目を通す敦司を横目に、ちはるは客が来ないかと、プリーツ扉のほうに歩み寄った。
金色のペイントで『カフェ・メトロノーム』と書かれたガラス板から、表を覗いてみようとして、ふと足を止める。
ちはるの目は扉の向こうではなく、プリーツ扉のガラスに映る自分の上にあった。
(似合っている、のかな…………)
恭子や理枝がいくらほめてくれたところで、それは「ボーイッシュな格好もサマになっている」
ということでしかない。
男のなりをしていても、いまはまだ誰の目にも「女の子」としてしか映らないのだ。
それを不満に思っている自分がいることに、ちはるはもうとっくに気づいていた。
(これが本当のボク)
ガラスに映っているのは、かわいらしいワンピースや華やかな振袖に閉じ込められている自分ではない。
黒の上下に白いシャツという、いささか狙いすぎた制服ではあるにせよ、きちんとした男ものの服に身を包んだ自分だった。
ちはるはそんな自分を見つめ、昼間のセーラー服姿の自分を隣に並べてみた。
(…………でも……こっちも、ボク)
いまのちはるは、毎日が不安と戸惑いだらけだった。
いまは、まだいい。
身体が子供であるうちは、まだ隠しおおせる。
だが、それもよくよくもってあと二~三年というところだろう。
手足はどんどん伸びて骨っぽくなり、女性であるならば柔らかな脂肪がつくはずの身体には、硬い筋肉がついていく。
脂肪が少ない分、腕には血管が浮き出て、たおやかな印象などかけらもなくなってしまう。
もちろん、確固たる意思を持って女性であり続けようと思えば、それが決して不可能ではないことくらい、ちはるにもわかっていた。
世間には、そのへんにいる女性よりもずっと女性らしくて美しい元・男性もたくさんいるのだ。
ただ、今のちはるには、まだそこまでの覚悟がないというだけだった。
(ボクはどっちになりたいんだろう)
あまりに幼い頃から言い含められてきたせいで、冷静に考えてみる機会のなかったちはるだが、こうして男の格好をしてみると、これが正しい姿なのだという確信のようなものがこみあげてくる。
だがそれと同時に、このまま女の子を貫いてもいいかもしれないという思いもあった。
「だってさ……女の子だから、親切にしてくれるんじゃない」
自分にしか聞こえないような声でつぶやき、そして驚く。
いったい誰のことを指してるのかと考えてみて、なぜだか後ろが気になった。
背後で新聞を読んでいる、「彼」のことが。

→「カフェ・メトロノーム」をダウンロードして読む

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