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ドーベルマンのように

ドーベルマンのように

ドーベルマンのように
著: 二條暁男
発行: キリック
レーベル: シフォンノベルズ
ジャンル:王子 極道・刑事 三角関係

警視庁警護課所属に配属された新人SP・瀬名は、任務中に自ら招いた危険から身を挺して守ってくれた上司・藤堂に急激に惹かれていく。
だが、日本へ視察に来た石油王国の皇太子・ラシードの警護を命じられた瀬名は、こともあろうにラシードから熱烈に求愛されてしまう。
ワガママ皇太子に翻弄されながらも心は藤堂を想い続け……。


「ずいぶんな落胆ぶりだな」
苛ついた声が、すぐ側でした。驚いて振り返ると、ラシードが扉の脇に立っていた。
「あの男は、お前の何なのだ。まるで恋人気取りで、私に邪眼を向けおった」
思いがけない言葉に、口の中が乾き、舌が喉の方へめくれ上がった。酔いが醒めれば、あのときの失態を反省してくれるなどと、一瞬でもでも思っていた自分が情けなくなった。
「いえ……彼は、俺の上司で、警護課第三係の係長です。今夜の俺の失態に怒っているだけで、恋人だなんて、そんなことはありません。絶対にありません」
語尾が震える。呼吸が荒くなる。水差し台におかれた水に口をつけるが、喉を過ぎたそばから乾いていく。
「上司、か……日本人は変わっているな」
それでラシードがちらりと視線を落とし、つられて瀬名も俯いた。藤堂に直された胸元を見られていることに気づき、カッと頬が赤くなる。
「私の国では、首に巻く布は、女が男に愛の証しとして捧げる物だ。単なる上司が、部下に与える物ではない」
「違いますッ……これは、違うんだ!」
図星を指され、瀬名はたまらずに胸のあたりを押さえて叫んでいた。
彼は瀬名から視線をそらさず、薄笑いを浮かべている。
鋭い眼差しは、瀬名を怯えさせる種類の熱っぽさを含んでいた。
「正直に言え……愛する彼に、迷惑は掛けたくないだろう?」
男はすうっと笑った。激しい語調ではないのに、深みのあるの声には従わせる力があった。
「本当に……藤堂さんは単なる上司なんです」
「でも、彼はそうは思ってない。お前のこの、美しくたおやかな首筋に触れて、自分のネクタイを巻き付けて締め上げた……」
「……ッ、何をするつもりですかッ」
指先が、乱暴にネクタイを解き、衿から引き抜いた。
「そしてあの男自ら、私の元へ獲物を運んできた……この意味、わかるだろう?」
「……はい」
と、瀬名は呟いた。そうだった。自分は彼によって、ここに送り込まれたのだ。
他ならぬ、藤堂の手で。
たとえ何があっても、自分さえ黙っていればいいのだ。なにも喋らなければ、彼の部下でいられる……これからも。
リビングには、天井まで高さのあるフランス窓がある。
カーテンの隙間から、東京の夜景が一面に見て取れた。
宝石を撒いたようなその輝きの中から、瀬名は警視庁のビルを探した。
あの輝きのどこかに藤堂がいる。
そうとでも思わなければ、叫びだしてしまいそうだった。
「ベッドに行くんだ」
ラシードは一方の手で瀬名の肩を抱くようにして、寝室のドアを開けると、促すように見下ろした。瀬名はもう抵抗などせずに、諦めたように従った。
ラシードの目のあたりが赤い。酔いではなく欲情しているのだとわかると、全身ががたがたと震えだした。政治の中にいるラシードは光り輝く皇太子だったが、今はたんなる獣欲を漲らせた雄に過ぎない。
突き飛ばして逃げ出すべきだという考えが、何度も頭の中で翻る。
そのたびに、胸のバッジが、重くのし掛かる。
俺は、SPなんだ。
マルタイのために命を投げ出す、忠実な犬なんだ……。
真の絶望という物は暗褐色をしている。
その絶望の濃い闇の中で、瀬名は自分の身に起こることを、まったくの他人事として眺めようと決めた。
他人事だとでも思わなければ、取り乱して何をするかわからなかった。
自分が自分でなくなってゆく。
寝室のシャンデリアには、煌々と明かりが燈されていた。
淡い白熱球を受けて、美しいドレープを描くシーツに瀬名の体を突き飛ばすと、怯えて満足に呼吸すらできない獲物のうなじを掴み、ラシードが唇を奪い取った。

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