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まなざしから恋は香る

まなざしから恋は香る

まなざしから恋は香る

著: 水瀬結月
発行: オークラ出版
レーベル: アクア文庫
ジャンル:ボーイズラブ小説>業界人

新しくできた図書館で働く司書の和穂。
目下の悩みは本の所蔵量が足らないこと。
ある日、図書館にはそぐわないサングラスをかけた、とびきり華やかな雰囲気の男が現れる。
弾みから和穂の唇を奪ったその男は、本の所蔵量が少ないことを指摘する無礼な言葉を残して去っていく。
彼の艶っぽさにドキドキしてしまった和穂は、恥ずかしいやら腹立たしいやらで……。
そんな折かねてから憧れていた人気文芸評論家の進士聡明が、本を寄贈するため図書館を訪れて――!?


目次 ++
まなざしから恋は香る
腕の中で想いは香る

「僕と拓真、半分しか血がつながっていないんです」
かいつまんで、和穂は話した。
拓真の幼少時代の生活、祖父から与えられた選集、言葉を話すことが遅かったことや、一緒に公園で遊んだことも。
そして拓真が、才能を開花させつつも、それを才能だと自分では認めないことも。
壮大な物語のあらすじだけを話すように、淡々と語る和穂の声を、進士は黙って聞いていた。
時折相槌を打つが、口は挟まない。
だから和穂も混乱することなく、自分の想いを話すことができたのだ。
「僕はあの子の家族だから、拓真がちゃんと自分の言葉で話して、自分の足で歩いていけるようになるまで、見守っていくのが当然なんです」
そう締めくくった和穂に、進士は少しの間、黙って車を走らせた後で口を開いた。
「今の説明だけだと、足りない気がするんだが」
「どこがですか」
「そのことと、おまえが俺から逃げようとしてるのは、関係がないだろう」
「逃げようなんて……」
胸が竦む。
まさか進士は、和穂が一生懸命に気づかないふりをしている気持ちを、すでに知っているのだろうか。
……そんなわけがない。そんな素振りを見せたことなどないのだから、進士は推測を口にしているにすぎないのだ。
「弟が大きな存在と闘い続けているのに、僕だけ安穏とした生活を手に入れるわけにはいきません」
だから和穂は、ことさらきっぱりとした口調で切り捨てた。
沈黙が漂う。
和穂はもう、これで話を終わりにしたかった。
それなのに進士は、長く続く沈黙に和穂の緊張が緩んだ瞬間を見計らって、質問を投げかけるのだ。
「拓真が幸せにならない限り、おまえも幸せにならないと?」
「そうです」
迷いなく頷いた和穂に、ふぅん、と進士は鼻白んだ相槌を打つ。
そして唐突に、車を路肩に寄せた。
「進士さん?」
車が停止する。
和穂の鼓動が跳ねた。
ハザードランプがカチカチと規則的に辺りを照らす。
進士はベルトを外して、躰ごと和穂の方を向いた。
そして和穂の鼻面に人差し指をずいっと突き刺し、低い声で言ったのだ。
「見守ることには、俺も同意する。だが、見守ることと、過保護にすることは違うだろう? 傷つかないように真綿で包んで拓真を守ってるつもりになってるだけで、実はおまえが、拓真に依存してるんだ。拓真の世界を狭めてるのは、おまえ自身だ」
「…なんで進士さんは、そんな酷いことばかり言うんですか」
「客観的な事実を述べてるだけだ。子どものころの拓真は、確かにおまえが庇護(ひご)すべき存在だったかもしれない。だけどそれから何年経った? あいつはいくつになって、どれだけ背が伸びた?」
ぎくっとした。
ここ数年で、ぐんぐんと成長していく拓真を見てきた。
そして和穂も、思っていたはずなのだ。
そう遠くない未来に、拓真は家族のもとを巣立っていくだろうと。
そのことに一抹の寂しさを覚えつつも、たくましく成長していく様を見るのはとても誇らしいものだと、考えていたのだ。
しかし進士の言うとおり、和穂の認識の中では、拓真はまだ小さい子どものままだった。
和穂がいなければ食事ができず、言葉を話すことさえもできなかった頃のイメージのままで、守ってあげなければと頑なに思い続けてきたような気がする。
けれど……それを、認めるわけにはいかないのだ。
「いくつになったって、拓真は僕の弟です」
「当たり前だ。家族の絆は絶対だ。でも、だからこそ、突き放すことも必要なんだろう?」
唸るように言って、進士は手を伸ばした。
和穂の方へ。
「それに拓真は……おまえが思ってるほど、子どもじゃない」
あ、と和穂が思う間もなく、進士の指がシートベルトを外す。そして和穂は、抱き寄せられていた。
肩口に頬が押し付けられる。進士のフレグランスが躰を取り巻く。
体温がそこにあり、進士の吐息が和穂の耳朶をくすぐった。
「――やめてください…っ」
我に返った和穂は、腕の中から逃れようともがく。
けれど拘束はいっこうに緩まなかった。
――怖い。
自分に対してさえ隠している感情が、意志に反して進士の方へ流れていってしまいそうで。
密着している躰から、すべてを暴かれてしまいそうだった。
「離してください! ……いや……んっ」
唇を、塞がれていた。
自然と眼を閉じてしまう。
何度も触れそうで触れなかった……出会う前からテレビ越しに憧れていた形のいいその唇が、和穂に触れているのだ。
息を吸うと、フレグランスが体内に広がる。血液が巡るよりも速く、和穂を進士の色に染め上げてゆく。
意識が溶かされる。――もう抗えない。
「……ん、…」
和穂は抵抗をやめた。進士の腕に身を任せる。
角度を変えて深くくちづけられる。あたたかい舌に、和穂のそれが搦(から)め取られた。
進士のキスは巧みで、和穂は呼吸を乱すしかなかった。
心臓が、恐ろしいくらいに早鐘を打っている。
和穂はいつの間にか倒されたシートに沈み、進士の体重を受け止めていた。
「もう、遠慮はしないからな」

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